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互換ブース (卓上塗装ブース) 互換ブース 関連

ファンの風量-静圧特性

こんにちは互換屋です。

この1~2カ月の間、何故か互換ブースに実装している排気ユニットファンの「風量」についてのお問い合わせが増えておりますので、改めて説明したいと思います。

互換ブース排気ユニットV2

お問い合わせいただく方のお話を聞いていますと、互換ブース(塗装ブース)の排気性能について知りたいという事のようですね。

互換ブースでは、作業エリアの奥に整流板という斜めの板で仕切られた周囲より気圧の低い「負圧室」を設け、周囲との圧力差によって、臭気などを吸気(排気)しています。
斜めの整流板に沿って臭気が「負圧室」の入り口に導かれると同時に、塗装ブースの開口部ですでに圧力差が発生しており、作業エリアの外にも臭気が漏れ出しにくくなっています。

勿論、吸排気にこの「風量」という性能は重要ではありますが、ファンにはもう一つかなり重要なファクターがあります。

それが「静圧」です。

この圧力の低い「負圧室」を作るために排気ファンが頑張っているのですが、その際にファン自体が持っている仕様、性能値である「静圧」という数値が大きく関係してきます。

「静圧」が大きければ、しっかりとした負圧を作り、排気ダクトから室外に力強く空気を押し出してくれます。

例えば、普通の扇風機は同じ室内(気圧空間内)で空気を循環させるだけですので、扇風機の前後で気圧の差はほとんど発生しませんが、静圧が大きければ風をより遠くまで送ることができるといった具合です。
一般的な「扇風機」と「サーキュレーター」と呼ばれる直線的に遠くまで一直線に送風できるタイプの物との違いをイメージして頂くと分かりやすいかもしれませんね。

塗装ブースにおいては、多くの場合、排気ユニットから排気用の「ダクトパイプ」を介して屋外に空気を送り出しますが、その「ダクトパイプ」は空気の流れの邪魔をします。空気の流れの「抵抗」になるわけです。
互換屋では互換ブースの配管施工で、ダクトパイプは「極力曲げずに直線的に」配管できる場所への設置をし、配管する事を推奨しておりますが、直線的であっても、密閉された配管内では空気の流れにくさは、そのままダクト内の圧力の高まりになりますので、その圧力に負けないファンの「静圧」性能が必要になります。

仮に「風量」性能が大きいファンであっても、「静圧」性能が低い場合、風邪を押し出す圧力が作れず、結果的に必要な風量が稼げない(エア体積を送り出せない)という事になります。

現実的には、開放された環境でない場合ですが、

風量が最大値を達成している状態、
逆に
静圧力が最大に到達している状態、

という事が成立している状態はファンの実使用上、物理的にあり得ません。

少し専門的な内容になってきますが、風量と静圧には非常に密接な関係があり、一般的に「風量静圧特性」と呼ばれるものがあります。

風量が最大の時、静圧力は0
静圧力が最大の時、風量は0

という関係があります。

グラフにすると下記のような特性になります。

ファンの風量静圧特性グラフ

上の特性グラフはファンの実装状態による風量と静圧を現した図になります。

曲線が水平軸と交わる点(A点)が風量最大の状態で、前述の扇風機のように「オープンな環境」では、風量が最大になり「静圧は0」になります。

曲線が垂直軸と交わる点(B点)が静圧が最大の状態で、密閉された箱の1面に穴をあけてファンを取り付け、風を送り込むとやがて、これ以上空気が流入しなくなります。この点が最大静圧状態で「風量は0」になります。

塗装ブースにおいては、ダクト内の「空気を押し出す力」、作業スペース内の「空気を吸い込む力」のあるファンを選ぶことが肝要で、このファンにはある程度の「風量」が必要ですが、それ以上に「最大静圧」値に注目すると良いかもしれません。

静圧値の低いファンの場合、「あんまり吸わない箱」がデスクの上に鎮座することになりかねません。

上記説明は、イベント出店の際、実機デモ説明でも良く説明させて頂いている内容と被るのですが、ファンの性能は一概に「風量」だけで確定付けられるものではありません。

風量というのは、何立方メートルの空気体積を何秒で送り出す能力があるのか?という所の性能数値となります。
良く塗装ブースの吸気口付近でティッシュなどをヒラヒラとさせて吸ってる?吸ってない?というような所のイメージ的な話や実機デモ機のブース内に手を入れて「これ吸ってる?」「え?今動いてるの?」というようなシーンをよく見かける所ですが、実演説明の際は「単純に風の力で吸排気しているのではありませんよ」という風に説明させて頂いている所以です。

また、良くお聞きするお話として非常に多い印象があるのは「衣装ケースの様な物に換気扇のファンを取付け自作してみたけど全然吸わない」というお話です。
換気扇のメーカスペック(仕様)を見て頂くと良く分りますが、どの換気扇も「静圧力」がかなり低いスペックとなっていることが分かるかと思います。風は作れても配管内を送り出せる力がそもそも無いファンという事になります。
要するに換気扇は設置用途が異なるという事になります。

着目すると良いファン性能値は、例えば互換ブースですと商品説明にも記載していますが、

最大風量:7.35[m3/min],260[CFM]
最大静圧:340[Pa] ,1.37[inchH2O]
定格回転数:6000[rpm]
音圧レベル:45~64[dBA](排気量可変)

が風量、静圧のスペックとなります。

物凄く簡単なイメージでいうと、
風量=どの量の空気を運べるのか
静圧=空気を運ぶのに、どの程度のトルク(力)があるのか
というようなニュアンスかと思います。

ちなみに、この性能を持ったファン選定は、ガットワークス様のネロブースに採用されているシロッコファンの仕様データに遜色のない性能を目指し、更にコンパクト化を目指して設計したものが互換ブースの「排気ユニット」となります。
互換ブース排気ユニットの静圧力340Paという数値は当該製品の構造、コンパクトさから考えると、どちらかというと高スペックな仕様領域に分類されるのではないかと思います。

その他、ファンの寿命はファンの回転軸、ベアリングの摩耗に起因するものがより濃厚になるかと思いますので、ファンが高回転になると風量は稼げますが寿命も短くなる可能性が有るという事になります。
互換ブースのファンは最大6000rpmとかなり高回転ですが、それは全開運転の時の数値ですので、常時最大回転で使用していなければそこまで気にする必要は無いと思います。
同様に消費電力も、互換ブースは最大運転時約60W程度消費しますが、エアブラシ塗装程度の回転域であれば、LED照明の電力を含め約2~3A(24~36W)程度になるかと思います。

以上、これから塗装ブースを選定検討される方は、各社排気ユニットの「静圧値」も参考にしてみては如何でしょうか。

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